ニュースの概要
米オハイオ州議会の上院に、電動キックボードや電動自転車など低速の小型移動機器を州全体で管理する法案が出された。成立すれば、所有者は州の自動車局に車両を登録し、1台につき25ドルを払う。運転免許を持たない人は、安全講習を終えた証明が必要になる。速度の上限は場所ごとに決まり、公道で時速20マイル、共有の歩道やレクリエーション用の通路で10マイル、歩道では5マイルとなる。報じたのは大学新聞のThe Lanternで、通学に使う学生への影響が主な関心である。これまで市町村や大学ごとにばらばらだったルールを、州として一本化する狙いがうかがえる。
引用元: 米オハイオ州、電動キックボードなどに登録料・安全講習を義務化する法案(The Lantern)
分析・見解
登録料25ドルは安全対策より、実態把握の道具
登録料25ドルは、日本円で4,000円弱である。抑止力としては弱い金額だ。それでも登録制を入れる意味は、車両の数と持ち主を行政が初めて把握できる点にある。
事故が起きても、今は誰の機器か分からない例が多い。登録番号が付けば、盗難対策や事故の統計にも使える。つまりこの料金は、罰金ではなく「台帳づくりの費用」と読むのが実態に近い。
速度を3段階に分ける設計は現場に合っているか
公道20マイル、共有歩道10マイル、歩道5マイルという区分は、場所の危険度に合わせた考え方である。時速5マイルは約8キロで、早歩きと同じ程度だ。歩行者との接触事故を減らす発想は理解しやすい。
課題は、機器側がいまどの区分にいるのかを知る手段が乏しいことだ。多くの電動キックボードには場所を判別する仕組みがない。利用者が自分でスピードを落とす前提になる。将来は位置情報で自動的に速度を絞る機能が求められるだろう。
免許がなくても乗れる代わりに講習を課すという折衷
運転免許を持たない人に安全講習の修了証明を求める点は、注目に値する。免許を必須にすれば、学生や外国人の利用が減る。何も課さなければ、事故のリスクが残る。講習という中間の道は、その間を取った案である。
日本は2023年7月に特定小型原動機付自転車の区分を新設した。16歳以上なら免許不要で、最高速度は時速20キロ、歩道では6キロの切替モードがある。講習義務はないが、ナンバープレートと自賠責保険は必須だ。オハイオ案は、保険ではなく講習で安全を担保しようとしている。方向は違うが、登録で車両を特定する点は共通している。
州一本化で動くのは利用者より販売店と大学
現状は市や大学がそれぞれ独自に禁止や許可を決めている。州法ができれば、その上限として全体の基準が置かれる。市が独自に厳しくできるのかは、法案の細部次第である。
この種の州法は、通過まで時間がかかることが多い。審議の過程で料金や速度が修正される可能性は高い。現時点では、最終形ではなく議論の出発点として見るのが妥当だ。
ビジネスへの影響
販売や貸し出しの事業者は登録の案内役になる
登録が義務になれば、購入者は購入後に手続きが必要になる。販売店が登録の手順を説明できれば、それだけで選ばれる理由になる。レンタルや共有サービスは、台数分の登録費用と更新管理が固定費として加わる。1,000台を運用する事業者なら、単純計算で2万5,000ドルである。この負担を料金にどう転嫁するか、早めに試算しておきたい。
日本企業にとっては規制の先例として使える
日本でも、電動キックボードの事故や違反は報じられ続けている。オハイオ案のように、登録、講習、速度区分を組み合わせる形は、今後ほかの国や地域でも参考にされやすい。輸出や海外展開を考える企業は、各地の規制が似た方向に進むと見て製品を設計するほうが安全である。具体的には、速度制限の切替機能や、車両番号を表示できる構造を、最初から備えておくとよい。
社内の通勤・移動ルールも見直す時期に入った
従業員が電動キックボードで通勤する企業も増えている。事故の際の責任や保険の扱いを、社内規程で明確にしておきたい。登録や講習の有無を確認する仕組みも要る。法の整備を待たず、自社で線を引いておくことが、結果として従業員と会社の両方を守る。